京都の京建具

障子について

障子の話

京建具においては、雪見(摺上げ)障子や硝子障子は上・下桟の厚みを堅框より1.5mm位薄く仕上ます。それ以外の障子は上桟は溝に丸入れとし、下桟は内部側に勾配をつけて仕上ます。背の低い障子は厚みも21mm~27mmと薄くしあげます。これらは障子を軽く見せるための工夫です。高級な障子は下記にふれます、付子付障子とか組子に面を取って組む障子に致しますが付子をつけるのはあくまで框に反りがでても紙が破れないように、又組子に面を取るのは組子を細く見せるための工夫で京建具の障子の原点は打込障子で、その材料を吟味することにより框に反りがこないよう、組子を極限まで細くしても曲がりがこないようにするのが基本です。

水腰障子

腰のない障子の総称。

腰付障子

下部に板(主に杉板)をはめ込んだ障子。障子の腰板には次のような種類があります。
杉笹杢板 年輪が大変細かく美しい杢目になっている板。代表的なものは屋久(薩摩)杉、霧島杉などがあります。
中杢板 年輪が竹の子杢のように素直な杉板。京建具ではこの板が大変に好まれます。代表的な板は吉野杉です。
杉柾板 杉の柾目板を糊で接ぎ合わせて用います。腰の高い場合に多用されています。
粉板(へぎ板) 材木を薄く割った板で、黒部杉や、椹材が割りやすいので粉板というと黒部へぎ、椹へぎといって粉板の代名詞になっておりますが、他の赤杉でも割れますがよほど条件が良くないと割れないので大変高価になり一般に使われません。黒部へぎは黒褐色の渋い感じをしておりますので茶室建築に多用され、幅を細かくして網代模様にして使ったりしております。
腰襖 板の変わりに襖をはめ込んだもので、襖紙の模様によって上品な感じがいたします。畳縁の場合は両面襖にし、板縁の場合は外部は板で内部のみ襖紙をはります。腰襖の場合腰の四週を四分一(漆塗り又は生地)で押さえる場合が多いが、お茶関係の座敷においては四分一はつけません。

打込障子

非常に簡素な障子で、お茶室の障子はこの障子です。茶道の素養のある京都の施主はこの障子を好まれます。この障子は障子の原点であり繊細さを表現できるからです。

付子付障子

主框の四周に組子を貼付けそれに組子を取りつけた障子。この障子は建具が反って他の建具に摺れても紙が破れないように考案されたものと思われます。

雪見(摺り上)障子

障子の一部を上げ下げして、建具を閉めたままで、外の景色を見るために考え出されました。
硝子戸の直ぐそばや坪庭に面するときは腰のないほうがよく、縁側がある場合は腰があるほうが良いと思います。
ときに坪庭の場合は庭の面積が狭いので庭の景色が建物の近くに設けられているので、腰をつけると肝心の景色が視覚から消える恐れがあります。
縁側のある場合腰がないと縁側が視覚に入り目障りになり、腰をつけると縁側が視覚から消え、外の景色がすっきりと見えます。
硝子を入れる方法として硝子枠に硝子を入れる場合と付け子に障子を入れる場合がありますが、京建具では後者の方が多く採用されております。
雪見障子の場合上げ下げする障子の厚みが薄いため障子紙の伸縮で組子が曲がりますので建具の幅は1mが限度ですが1mを越す障子の場合、重なりの縦框の厚みを厚くしてやれば1.350mm幅の雪見障子でも制作可能です。
その場合造作加工前に溝畔を3mm大きく加工してもらう必要があります。

硝子入障子

障子紙をはるかわりに硝子やアクリ板を入れたもので東障子とも呼ばれております。紙を貼って硝子を入れる場合もありますが、紙と硝子の間を2~3mmはすかしておかないと硝子に結露した水滴が障子紙について障子紙を汚すので注意が必要です。

組子の形状による呼称

横繁組子障子、縦繁組子障子(書院に好んで使われる細間の縦繁障子のことを柳障子とよぶこともあります)、菱組子障子、等など。


機能と特色

障子には、優れた数々の機能が有ります。

冬暖かく夏涼しい

断熱の良い住宅で一重硝子窓の場合、開口部の熱損失は、壁面や床などの面積率にもよりますが、約40%あるといわれています。
そこに紙貼障子をいれますとその熱損失は、約半分になるといわれております。
金属サッシュの方が木製硝子戸より熱効率は高そうですが、金属サッシュはその金属部が冷橋となって木製硝子戸より10倍以上も熱伝導率が高くなるそうです。
硝子は日光をほとんど通過させますが、障子紙は直射日光の約半分の熱を遮るそうですので夏の冷房効果を高めます。
特に、寝室に遮光襖を窓の内側に建てこみますと夜間の放射冷却の防止に役立ちます。
最近の建物は、壁面や床面、天井に断熱を高める材料が使われるようになり室内の断熱効果は高まってまいりましたが、開口部のガラス面からの熱損失をいかに少なくするかが課題だと思います。
そこで、最近はペア硝子を使用したり、硝子戸を二重にして熱損失を防ぐ工夫がなされております。
次の表は、日本建築学会設計計画のパンフレット「住宅の保温設計」記載のものです。

種 類 熱貫流率
(kcal/㎡.h.℃)
種 類 熱貫流率
(kcal/㎡.h.℃)
一重窓(金属サッシ) 6.5 一重窓(木製サッシ) 6.0
ペアガラス窓(金属サッシ) 3.8 ペアガラス窓(木製サッシ) 3.0
ニ重窓(金属サッシ) 3.3 ニ重窓(木製サッシ) 2.8
一重室内窓 3.0 障子 4.8
ふすま(厚さ1.6cm) 1.7 カーテン(厚手) 3.7
ガラス窓+障子 2.7

この表から熱還流率の一番小さいのは襖で、二番目が硝子戸+紙貼障子となっております。
締め切った部屋に居ながらなんとなく背中がゾクッとした経験をすることがありますね、これは低温のガラス面や、壁にふれて冷やされた空気が床に沿って流れ、暖房によって上は暖かく下は冷たいという空気の温度差を著しくするからだそうです。
硝子面に厚手のカーテンを使用しても、窓枠とカーテンの隙間から窓面で冷やされた空気が流れこの現象を食い止められません。硝子面の内側に紙貼障子がありますと硝子面で冷やされた空気が遮断され、室内の温まった空気が直接硝子面にふれないのでこの現象を食い止め暖房効果を高めます。

窓を閉めたまま空気の換気や吸湿性があるのも紙貼障子大きな特色です。
障子紙は多孔性のため空気を自由に通し自然に清浄化をおこなっております。
吸湿性もあるため室内に湿気がこもるのを防ぎます。

障子紙と光

日本の直射日光はヨーロッパより30%も強いそうです。
そこで障子、カーテン、ブラインドなどで遮るのですが、そのなかで一番最適なのが障子です。
障子に貼られた和紙の光の透過率は40~50%です。そのため、直射日光を半分遮り、半分透過させるため日当たりの感じを残しながら日光を遮るといったすぐれた特性をもっております。
また、和紙のもつ多孔性のため、光が拡散され、射し込んだ方向だけに進むのではなく、各方面に散乱して部屋全体を明るくします。光は直進するので、日光の当たったところは極端に明るく、あたらないところは薄暗くなります。
和紙を通った光は半分だけ透過し、さらに拡散されるので、非常に柔らかい光になり人の情感に優しさをあたえます。
カーテンやブラインドでは、よほど薄手でないかぎり和紙ほどの柔らかく均一の光はえられません。
夜間には白い和紙に照明の光が反射して、照明効果を高めます。
また、和紙の光を和らげる性質を利用して各種の照明に利用されております。

障子紙の種類と特色
  • 手漉楮障子
    障子紙の最高級品。材料を選び、手間隙をかけて作られるため,風合いも丈夫さも一番です。
  • マニラ麻、レーヨン、ビニロンなどの混抄障子紙
    マニラ麻やレーヨン、ビニロンなどを40%以上配合したもの。手漉き和紙の感覚を最も残し、独特の風合いと強さをもつ機械漉障子紙の最高品です。
  • 混抄レーヨン障子紙
    レーヨン及び他の長繊維を40%以上配合したもの。美しい光沢とかなりの強度などが楮に似ており、原材料が楮にくらべて安いので、質的にも価格的にも最も実用的で、現在一番多く使われております。
  • 混抄レーヨン入り障子紙
    混抄レーヨン障子紙のミニ版、バブルにレーヨンを20%以上40%未満配合したもの。
  • パルプ障子紙
    パルプを80%以上混抄したもの。それだけ強度も低く、風合いも落ち、価格的には一番安いものです。
  • プラスチック障子紙
    混抄レーヨン障子紙にプラスチックフィルムを裏面から接着したり、両面からサンドイッチのように接着したもの。強度はレーヨン障子紙の数倍あり、風雨にも破れません。通気性が少なく断熱性もすぐれているため、かなり高い冷暖房効果があります。但し、通気性が少ないため、締め切った部屋で暖房する時は時々換気するほうがよいとおもいます。

参考資料 建設省建築研究所「障子の本」